子供のころの記憶
スキージャンプの原田雅彦さんは2006年の引退会見で、ジャンプ選手生活の一番の思い出を「少年団のころに7メートルのジャンプを飛んだこと」と語ったことは有名です。
原田さんほどのトップアスリートでも、少年時代、ジャンプを始めたばかりころの記憶は貴重なもの。そこには人が空を飛ぶという、ジャンプ競技の独特の感覚が影響しているのかもしれません。
先日、TVh杯ジュニアジャンプ大会の実況を担当しました。下は7歳から上は15歳まで、小学2年生から中学生までの選手が出場する大会です。ジュニアの大会といえども、そのレベルはなかなかのもの。十代の選手が国の代表選手になるなど、ジャンプ界は世界的に国際大会で活躍する年齢が下がってきているため、ジュニア選手たちのジャンプから、世界はもうすぐそこという、モチベーションの高さを感じました。
そんなジュニア選手たちが競技を行う前に行われたイベントが“ミニヒル”と呼ばれる本当に小さな台を使った いわゆる“ジャンプ体験”です。幼稚園児や初めてジャンプ台を飛ぶ子供などが参加していました。その様子は、直滑降ですべりながら小さな障害物を軽く飛んで滑り降りていく というようなもので。ジャンプのイメージとはかけ離れたものです。
しかし、飛び終えた子供たちの顔には必ず笑顔がありました。笑顔のわけは何なのだろう? ジャンプ台を飛べたことの達成感なのか、恐怖心からの開放感なのか、それとも、空中を飛んだ感覚の面白さなのか? いろいろと考えましたが、これは私のようなジャンプを経験したことのない人にはわからないのかもしれません。
原田雅彦さんのジャンプ選手生活の一番の思い出、それを経験している子供たち。その笑顔があの“原田スマイル”と重なって見えました。