勇往邁進の前人未踏
プロ野球・ファイターズの宮西尚生投手が
8月4日のソフトバンク戦で
通算400ホールドを達成しました。
プロ入りから17年、リリーバーひと筋に
チームの勝利を左右するしびれる場面で腕を振り続け
3度のヒジの手術という代償を払いながら達成した
偉大な記録です。
歴代2位は273ホールド(山口鉄也・巨人)ですから
その記録がいかに突出しているかがわかります。
宮西投手は入団時から度々取材をさせていただき
色々な話を聞かせてもらいました。
2018年制作の特別番組ではロングインタビューも収録しました。
また、北海道新聞で書いていたコラム
「Go!Go!ファイターズ」(昨年末で終了)でも
たびたび取り上げさせていただきました。
2018年7月の担当回の下書きから
宮西投手にまつわるエピソードを紹介します。
↓
7月7日に通算274ホールドを達成し、 NPB歴代1位となった宮西投手。
日本球界の「中継ぎ投手の頂点」に立った左腕はしかし、
高校(市立尼崎高)入学当時は、 100㌔そこそこの球速しか出なかったそうです。
また1年先輩には、のちに希望枠で巨人に入団した 金刃憲人投手(※補足1)
という、 絶対的なエースがいました。
宮西投手の高校野球生活は、 少なくともその時点では
歴然とした差があった先輩の背中を追うところから始まり、
そしてその背中は、客観的にも当時の宮西少年の目からみても、
遥か彼方にあったはずです。
今も同校で指導する(※補足2) 恩師・竹本修監督は
「金刃がダイヤモンドなら、宮西は石炭」
と二人を表現した上で、こう続けます。
「でも石炭は、磨くとすごくきれいな、黒くて強い輝きを見せる。
金刃に追いつきたい気持ちが、その輝きを生みだしたんです」。
さらに竹本監督は
「宮西は、自分の現在地がよくわかっている投手でした」
とも言います。
「目指す自分になるために、 どういう努力が、どれくらい必要かを把握でき、
かつ、自分で決めた努力をやり続ける 意志の強さがあった。
身体能力が一緒でも、考え方や気持ちの持ち方で、
成長の度合いは大きく変わるんです」
竹本監督はこの話を、 現在の教え子たちによくしているそうです。
毎年、オフは母校での自主トレを 慣例にしている宮西投手。
その姿を憧れのまなざしで見つめる現役部員たちに、
「でも入学した時は、100㌔ぐらいしか出なかったんだぞ」
と竹本監督が言うと、皆驚くそうです。
「高校球児に勇気を与える存在ですよ」
恩師は目を細めます。
(※補足1)立命館大→巨人(2007~12年)→楽天(13~17年)。
プロ通算(10年)成績は216試合登板、17勝17敗 36ホールド。
(※2)当時。現在は退任しています。
目指す自分になるために、 どういう努力がどれくらい必要かを把握し、
自分で決めた努力をやり続ける―。
その姿は宮西投手の座右の銘
「勇往邁進」を体現したものであり
その積み重ねによって成し遂げられた
「前人未踏」の記録と その道のりに対して
心から敬意を表します。