進化を止めないレジェンド
今月6日に52歳の誕生日を迎えた
スキージャンプ界の「レジェンド」、
葛西紀明選手にインタビューしました。
当たり前の話ではありますが
同じ50代でありながら
肌の色つや、筋肉のハリ、
全身から漲るエネルギーに圧倒され、
それゆえ、近くにいるだけで、
こちらもエネルギーの「おすそ分け」をいただいたような
高揚感を覚える時間でした。
「今年2月のTVh杯で8年ぶりに優勝した際には
『史上最年長優勝記録を更新、
レジェンドがまた新たな伝説を作りました!』
と実況させていただきました」と伝えると、
「あれは大事な試合でした。
あそこで優勝したから、そのあと
(W杯への復帰とその後のポイント獲得)につながった。
本当に大事な試合、大事な優勝でした」
としみじみと回想した葛西選手。
その姿を見て
「そんな大事な時間に、自分もいたんだ」と
こちらも感慨がこみあげました。
いろいろと貴重なお話を伺いましたが
印象に残っているのが
「金メダルを獲りたいという気持ちは
心の片隅に置いているんです」という言葉でした。
葛西選手は「50歳を超えても現役であり続ける理由」として
「スキージャンプに関して、他のことはほぼ実現しているけど
まだ僕は、オリンピックの金メダルを獲っていない。
この目標を達成しない限り辞められないです」
と、事あるごとに発言してきました。
7度目の五輪となった2014年のソチで、
悲願の個人銀メダルを獲得しても
「まだ、金じゃない」
と、即座に次の五輪を目標に掲げたほど
金メダルへの渇望を表明し続けてきた選手です。
年齢を重ね、トップパフォーマンスを維持するには
より厳しい節制が求められている中、
この「金メダルへの執念」は
それを支えるゆるぎない原動力として
更に強くなっているに違いないと
勝手に推測してしまっていたので、
正直、この言葉には驚きを覚えました。
葛西選手は、こう続けています。
「頑張りたいと思う理由が変わってきている。
41歳で銀メダルを獲ってから、
『この歳で頑張っている葛西さんはすごい』
『葛西さんの姿に私たちも元気をもらえる』、
そういう声をたくさんいただくようになりました。
今はオリンピックの金よりも
そうしたみなさんの声が、一番心に響いている。
僕が活躍することで、たくさんの方に元気を届けられる。
そのために自分は頑張りたい、
という気持ちのほうが強いんです」
アスリートとして、一人の人間として
これは「進化」だと私は思います。
そしてこの「発想の進化」が
たゆまぬ節制と鍛錬を支えているのであれば
その進化はとても尊いものだと感じます。
誰も歩いたことのない道を歩き続ける、
それゆえに「レジェンド」と世界から称賛される
稀有なアスリートの挑戦を
今後も見守りたいと思います。
そしてまた、「大事な試合」を
実況できることを願っています。20:21:29