「全米デビュー」と、開幕に寄せて
大変、手前味噌ではありますが...。
先日「全米デビュー」をいたしました。
現地3月14日発行の「ロサンゼルスタイムス」に
コメントが載ったのです。
執筆した同紙のスポーツコラムニスト
Dylan Hernándezさんからは
記載の許可はいただいています。
きっかけは3月12日のエスコンフィールド。
ファイターズのオープン戦前の練習の取材中、
旧知の人物から、彼を紹介されました。
聞けば"blue"=ドジャースに
超大型契約で加入したロサンゼルスの"時の人"、
大谷翔平の「日本でのプロ野球生活のルーツ」
について書くため北海道に来たのこと。
遠方よりやってきた彼、紹介してくれた方、
日本の野球ファンと大谷ファン、
そして何より、
自分がこれまで取材してきた時間を裏切れないと
精一杯質問に答えたつもりではありましたが、
全米屈指のメジャー紙に、
こんなにたくさん自分のコメントが載るとは
思いませんでした。
しかも「longtime Fighters broadcaster Shinji Daito」とは。
光栄ですが、ちょっと気恥ずかしい。
ロサンゼルスの読者はどんなイメージを持ったことやら。
書かれているコメントを
(翻訳アプリで日本語に訳してですが)改めて読んで
当時の空気感や感情が蘇りました。
大谷がファイターズ入団にあたり
二刀流に挑戦すると表明したとき
決してポジティブな声ばかりではなかったこと。
北海道新聞で14年近く担当していたコラム
「Go!Go!ファイターズ」(昨年末で終了)で
「ドリームキラー」という言葉を使って
その空気へのやるせなさを伝えた記憶があります。
直訳すれば「夢を潰す人」である「ドリームキラー」。
アスリートのメンタルサポート研究者、白石豊さんの言葉で
高い目標に向かって進もうとする人に、
「現実は甘くない」とか「身の程を知れ」などと
(善意の場合も含めて)否定的な意見で
自信を奪い、可能性を閉ざす働きかけをする声のことで、
選手の肉体ではなく頭の中に"壁"を作らせ、
能力の向上を妨げる要因の一つです。
「子どものころからエースで四番」の猛者たちが
ステージが上がる中で自分の生きる場所を探してたどり着く
プロ野球という厳しい世界で
投打二刀流を目指す。
それは確かに当時は「夢」であり
その夢を潰す声は
当時の世の中に紛れもなく、そして少なからずありました。
当時の下書きを見返してみたら、
こんなことを書いていました。
「スポーツの本質的な魅力は、
困難を伴う高い目標に挑戦する過程にあり、
観戦者としての楽しみ方もまた、
そうした過程に寄り添い、味わうところだと思います。」
「私たち伝える側を含め、大人たちは、
健全かつ明るい視線で見守るべきだと強く思います。
そして何より、ドリームキラーを悠々と飛び越えて、
大谷選手が『突き抜けた』スーパースターに
飛躍することを祈っています。」
今、ドリームキラーを悠々と飛び越えて
突き抜けたスーパースターになった彼は
ヘルナンデスさんの表現を借りれば
「myth=神話」となって
エスコンフィールドに描かれた壁画になっている―
数奇な、しかし素敵な時の流れを感じます。
やりとりに全くストレスを感じないほど日本語が堪能な上、
野球のみならずスポーツ全般への造詣と知識が豊富だった
ヘルナンデスさんは
そんな私の心情をくみ取ってくれたと
文面から感じています。
翻訳アプリを通じてなのが少々もどかしいですが。
日本でもプロ野球が開幕し
MLBも本格的にシーズンの幕が開きます。
グラウンド外での騒動はいろいろありますが、
少なくともグラウンド上は
果てしなく広がる夢の空間でありますように。
それだけは今、強く思っています。
longtime Fighters broadcaster Shinji Daitoより。
いやいややっぱり、気恥ずかしい。