最長&最高の「定点観測」
ああ、本当に来たんだな、この日がー。
ずっと前から分かっていたこと。
でも、どんな光景になるのか想像できず、
実は、想像することを拒否する自分を
うすうす自覚しながら過ごしてきて
遂に訪れた、この日。
2022年9月28日。
札幌ドームのファイターズ本拠地最終ゲーム。
できるだけ、これまで通り過ごそうと思っていた。
いつものように記者席に座り
いつものように試合を観ながら、スコアをつける。
その「いつものように」を慈しもうと
心に決めて過ごした。
バックネット裏から俯瞰して試合を観る。
初めて野球場でそれを経験したのは
中学1年生の、日立市民球場。
高校野球の茨城県大会だったと記憶している。
炎天下の中、2試合立て続けに観た翌日、
終業式の校長先生の話中に、
貧血で倒れたことを覚えている。
(外じゃなく、体育館の中だったけど)
大学では実況の練習で通った
神宮球場の「特別指定席」から。
名古屋の局に就職後は
電話リポートの仕事でナゴヤ球場の2階席から。
1997~2002年はナゴヤドームの記者席から。
たくさん野球を見て、スコアをつけたけど
この場所以上に、野球を観た場所はない。
人生の中で最も長く
野球の「定点観測」をした場所だ。
2004年4月2日のスコアを見つけた。
「北海道本拠地移転後 地元 初ゲーム」と
わざわざ青字で書いてあった。
この日の持つ意味を記しておきたいという
当時の自分の気持ちが伝わって
気恥ずかしいやら、うれしいやら。
この日から、「定点観測」の日々は始まった。
リーグ優勝の監督インタビューや
ビールかけの歓喜
試合前に過去の名場面の生実況をしたり
ここから本が生まれたり
一日一日は「日常」として過ぎていったけど
積み重ねたら、人生の中で
とても多くの時間を占めていた
19年の定点観測。
最後のセレモニーで見えた景色と空気を
スコアブックに詰め込んで
また新たな定点観測を始めよう。
札幌ドーム、
他のなにものにも代えがたい、
濃密で大切な時間をありがとう。
コロナ禍になるまで選手と報道陣が共通で使っていた「関係者入口」
試合後選手やコーチを取材するため「出待ち」をした場所として
ひときわ思い出深い場所の一つ。
最後にここを通って帰ることができなかったのは心残りだが
「19年間ありがとうございました」の文字は
しっかり目に焼き付けた。