3年ぶり→20年ぶり
終わりは、いつかは必ずやってくる。
覚悟はしていても、いざそのときが来ると
やはり喪失感があった。
あの日から3年の歳月を経てやってきた、沖縄。
プロ野球のキャンプ取材に、還ってきた。
30年前に社会人になってから
毎年2月は必ず肌に感じていた海風。
心地いいだけではなかった。
若手の頃、取材のノウハウがわからないまま放りこまれ
脂汗に当たる風を感じたことも、
無理難題を言われ
途方に暮れながら風の中に佇んだことも
記憶の中にしっかり残っている。
それでも、ここにいることに幸せを覚えてきた。
プロ野球を、スポーツをしゃべる者として
シーズンを戦い抜く「土台づくり」の場を
目の当たりにすることがいかに大事か。
芝居でいえば、演目を作り上げるために
役者たちが生身の姿がむき出しにして
切磋琢磨する稽古風景を
目の前で見られる幸福というべきか。
そうした時間は間違いなく
今の自分の血肉になっている。
3年ぶりに帰ってきたその場所。
ファイターズのキャンプ地、名護と国頭も
しみじみと味わったが
練習試合の取材で訪れたのが
中日ドラゴンズの1軍がキャンプを行う
北谷(ちゃたん)町の「Agre北谷スタジアム」
かつては「北谷公園野球場」と呼ばれていた。
名古屋の前職時代の
まさしく「修練の場」である。
コンクリートむきだしの外観は当時と変わらない。
近くで見るとちょっとくすんでいるこの横断幕も
当時のままなのではないかと思わせる年季を感じる。
球場のすぐとなりの陸上競技場で
ダッシュを繰り返していた
背番号3の姿を思い出す。
今季から指揮をとる
「ミスター・ドラゴンズ」立浪和義監督の現役時代である。
スタンドで取材するのは、20年ぶり。
あと1か月ちょっとで
新天地・北海道での暮らしが始まるタイミング。
それまでの名古屋での暮らしへの感謝を感じながら座ったスタンドに
また座ることができて、感無量だった。
この場で学んだことをどう生かしていくか
その前に、そもそもその場に立てるのか、
焦りと不安と、根拠のない希望が混在しながら過ごした
若き日の時間を思い出しながら
短い滞在を終えた。
この日の練習メニューに書かれていた言葉。
ここで取材していた頃の自分に聞かせてやりたい言葉です。
こころに沁みました。