神無月の染み入る夜は
令和も3年の秋。
平成すら、遠きにありて思う頃。
ましてその6年目にあたる年など
遥か彼方の昔話。
もはや歴史の世界の言葉になっている
「国民的行事」のあの日。
それでも、そこにいた者には
生涯忘れることのない一日。
足の踏み場もないほど報道陣でごった返し
開門と同時にファンが雪崩を打つように外野スタンドに殺到し、
球場を見下ろせる近くのマンションの非常階段に
人だかりができていた。
みんなみんな、高揚していた。
目がキラキラしていた。
名古屋の10月にしては程よい涼しさの夜なのに
身体の芯がずっと熱い。
30年近く経っても
生々しく身体に刻まれた記憶。
誰かと話すわけでもない。分かち合うわけでもない。
思い出すだけで幸せ。
ただ今年は、こんな一冊が手元にあるので
よりしみじみと過ごせました。
神無月のあの日、
野球の神様は確かにそこにいた。
それに自分もいた幸運をかみしめるときの朋は
やっぱり、手羽先です。