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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

いつもと少しだけ違う秋

10月末から11月初めにかけて見た光景。

この時期にいつも見ているもの...のはずなのだが、

ほんの少しだけ、違う。

例えば、札幌・宮の森ジャンプ競技場。

10月29日に行われた

札幌市長杯宮の森サマージャンプ大会の取材にて。

宮の森①.jpg

   

宮の森②.jpg

この時期に「サマージャンプ」が行われるのは、珍しくない。

凍らせず、水を流した助走路を使用して行われる

「サマージャンプ」の試合は

毎年この時期にも行われるし、

紅葉の中を、選手たちが飛んでいく光景は

札幌のこの時期の風物詩といっていい。

宮の森③.jpg

うの、この大会は

例年なら8月初めに行われるもので、

それがおよそ3か月遅れて実施された、ということだ。

理由は、新型コロナウイルスだ。

照りつける日差しの中、

日焼け対策に首にタオルを巻き

冷たい飲み物を手にしたファンが集い

夏の緑に染まった山から、選手たちが飛んでくる―。

今年はそれがなかった。

風景そのものは、いつもと同じなのに

何かが違うと思わせるのは

身体のどこかに組み込まれた

カレンダーの狂いを感じたから。

あるはずのものがないまま、秋になった。

それにふと、気づいてしまったのだ。

   

3日後の11月1日は

ファイターズの今シーズンの本拠地最終戦の取材で

札幌ドームへ。

今年もプロ野球が終わってしまうことを名残惜しみながら

来年への期待を込めて

しばらく味わえない球場の空気を感じながら過ごす。

ドーム最終戦.jpg

これも、いつもと同じはず。

でも、何かが違う。

「きょうから11月だったんだ」と気づいたからだ。

この時期にレギュラーシーズンの試合が行われることは

過去にない。

その年の最後の戦いである日本シリーズでさえ終わっている。

公式戦が目の前で展開されていること自体が

未知なる出来事だったのだ。

ジェームス.jpg

試合は7対1で快勝。プロ2年目の"ジェームス"野村が2安打4打点の活躍。来季の飛躍を期待させる雰囲気を漂わせる20歳だ

理由は、これももちろん、新型コロナウイルス。

3か月遅れで開幕し、交流戦もオールスターもなく

無観客で始まり、途中から有観客にはなったものの、

来場人数も、応援スタイルも制約された中での120試合。

異例づくめのシーズンだった。

...はずなのに、どこかその異例に馴染みかけていた。

試合後、ドームを出て家路に向かうファンの列。

ドーム最終戦④.jpg

 

ドーム最終戦②.jpg

これも本来なら、いつものことなのだが、

今年に関しては、シーズンの最後の最後に、

ようやく取り戻した光景なのだ。

当たり前に、スポーツを楽しむ日常があること。

その意味を改めてかみしめながら、家路についた。

ドーム最終戦③.jpg

   

その2日後、大倉山ジャンプ競技場で

NHK杯ジャンプを取材。

前述の通り、紅葉の広がる大倉山でのジャンプ取材は

これまたこの時期の恒例行事。

大倉山②.jpg

ただ、この日も、どこか少しだけ雰囲気が違う。

この試合は「サマージャンプ大倉山4連戦」の最終戦。

同じジャンプ台を会場に

4日連続で大会が開催されたのだ。

これはジャンプの世界では、異例中の異例。

微妙に異なる特徴を持つジャンプ台を転戦しながら

その対応力を競い合うのがスキージャンプという競技の本質で、

だから、30戦近く戦うワールドカップの総合優勝こそが

最も価値のあるタイトルなのだ。

同じ台で4試合も続けて試合を行う経験は

そこにいる選手たちは、おそらく誰も経験したことがない。

その「いつもと違う」感覚が、微妙な空気として漂っていた。

大倉山①.jpg

豆粒のように小さいですが、飛んでいる選手がわかりますか?

これもまた、新型コロナウイルスによる

日程変更によってもたらされたものだ。

   

見える風景は、特別変わりばえしていない。

でも、何かが違う。

今年を象徴する異例な体験を経て

2020年も、あと2か月を切った。

この先には、どんな光景が広がるのか。

願わくば、

「幸せな違和感」を覚えるものでありますように。