読書の春
「外出しない」ことを、
窮屈な時間ではなく、
脳に快感を注入する豊かなものにする。
それならやっぱり、読書でしょ。
...というタイミングで幸運にも手にできた新著など、
魅惑を誘う著書を紹介します。
まずは、今年3月26日発売された
「折茂武彦 弧を描く」(佐藤大吾著・北海道新聞社)
49歳まで国内随一のシューターとして君臨し
今シーズン限りで現役を引退した
日本バスケットボール界のレジェンド、
レバンガ北海道・折茂武彦さん
(引退したので「選手」ではなく「さん」)
これまでの歩みを記した一冊。
一人のアスリートの軌跡を描いた、にとどまらず
知れば知るほど不思議な魅力(もちろん、いい意味で)に満ちた
人間・折茂武彦の姿も盛り込まれています。
著者の佐藤大吾さんは
折茂選手が縁もゆかりもない北海道にやってきた
北海道のプロバスケットボール黎明期
~であるがゆえに、波乱と混乱に満ちた日々~
から取材を重ねてきた記者で、
しばしば現場をともにしてきている、旧知の仲の方です。
当時の空気感や、その場に渦巻いた感情がよみがえる
生々しいエピソードもふんだんに盛り込まれ
いろいろこみ上げるものがありました。
タイトルの「弧を描く」とはもちろん、
折茂選手の代名詞である
正確無比なシュートの軌道を表していますが、
それだけではなく
高く飛び、頂に届き、やがて落下して、地に戻る、
成功と失敗、栄光と挫折、希望と失意を繰り返す
人の生き様を象徴していると思います。
そして折茂さんの描く「生き様の弧」は、
とても鮮やかで、私たちを魅了する曲線です。
現役最後のシーズンが途中で打ち切られるという
これまた予期せぬ波乱で終わりましたが
これもまた、折茂さんが描いた、
誰も真似のできない「弧」の軌道なのだと実感します。
バスケットボールに詳しくない方でも
入り込んで読める一冊です。
続いては、
4月14日発売、「プロ野球の誕生Ⅱ~リーグ元年の万華鏡」(彩流社)※画像右
2月5日に出た「プロ野球の誕生 迫りくる戦時体制と職業野球」(同社)※同・左
とセットでご紹介します。
著者は、愛知県在住の
中西満貴典(なかにし・みきのり)さん。
この2冊の他にも、日本プロ野球の誕生にまつわる著作があり、
さらに専門はレトリック批評、記号論で
そちらの分野の著作もある(どんな内容かはさっぱりわかりません)という
多才な方だそうです。
...「だそう」と推定表現をしたのは
実は中西さんと面識はありません。
ただ縁あって、今回の執筆の過程で生じた
ある調べもののお手伝いを、
ほん少し、させていただきました。
これまでプロ野球に関わる仕事をしてきた縁、
かつて名古屋に住んでいた縁、
そのときに紡いだ、人の縁、
それらの細い細い糸を手繰り寄せていく中で
すべてがつながって実現した、
本当に「縁あって」としかいいようのない
それ自体が短編小説であるかのような出来事で
とても心地よい体験でした。
中西さんの、
史実に忠実に、丹念に事実をつづることへの情熱と
その背景となる、日本のプロ野球の創成期を切り開いた
先人たちへの敬意が凝縮しています。
じっくり腰を据えて読みたい力作です。
ここからは「ついで」です。
これらの力作たちの傍らに置いていただき
メインのごちそうの箸休め程度で結構なので
読んでいただければうれしいなと思っているのが
拙著「スポーツ実況を100倍楽しむ方法」
去年3月の発売当時、こんなことを書きました↓
https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2019/04/post-205.htm
手前味噌な感じが全開なので恐縮なのですが
中継を通じたスポーツの熱気と感動を
味わいたくても味わえない方々に、
「そのとき」が帰って来たときに
ほんの少し楽しみ方が増えるお手伝いになれば
幸い至極に存じます。
ほんとうに、いつの日か戻ってくる
「そのとき」を待ちわびて
今は想像力を鍛えましょう。