「ミスター」と「レジェンド」の2月
1月も下旬の23日。
外は北海道らしい寒さの真っただ中だったが
札幌の北海きたえーるの中は、熱にあふれていた。
「バスケ愛」を燃料にした、柔らかな温かみを生み出す熱だった。
2019年のホーム初戦、
B1リーグ、レバンガ北海道対秋田ノーザンハピネッツの試合前。
レバンガの折茂武彦選手(右)と、
男子日本代表チーム・佐古賢一アシスタントコーチ(左)による
トークショーが行われた。
48歳の同期生。
高校で知り合って以来の親友にして
90年代から2000年代初頭、
日本の男子バスケット界をけん引し続けたトッププレーヤーの二人の再会。
1月5日に折茂選手が達成した
国内トップリーグ通算1万得点を記念する
催しとして行われた。
選手として試合に出場する折茂を配慮して
試合開始の2時間近く前の開催だったが
当時の二人のプレーを知るファンが
熱視線を送りながら、トークに聞き入っていた。
今なお現役選手で、リーグ屈指のスコアラー、
さらに球団社長も兼務する「レジェンド」折茂と、
現役時代、日本を代表するポイントガードとして
「ミスターバスケット」と呼ばれた佐古。
二人の共演は、往時を知るファンからすれば
たまらないものであることがひしひしと伝わった、
会場には折茂の偉業をたたえ、
これまでの軌跡を紹介するスペースが設けられていて、
その一角に、佐古と折茂がコート上で火花を散らす
熱戦のビデオが上映されていた。
ともに30歳ぐらいだろう。
まさにキャリア絶頂期の二人が、
リーグチャンピオンをかけて戦う姿に
当時を知る人も知らない人も
生れてもいない少年も、いつしかひきこまれ、
食い入るように試合を見ていたのが印象的だった。
いい試合は、時代を超えることの証明だ。
バスケットボールを取材、実況の対象として
見るようになったのが2007年頃。
佐古は2011年に引退しているので
二人がそろってコートに立っていたのを見ていたのは4年足らず。
なぜ二人が「ミスター」であり、「レジェンド」なのか、
それは一冊の「座右の書」を読むことで知った。
→https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2009/09/post-6.html
バスケットボールを実況する意義を感じた一冊でもある。
二人に共通するのは
所属するチームを失う経験をしていること。
佐古は実業団、いすゞ自動車の休部、
折茂はプロクラブ、レラカムイ北海道のリーグからの除名処分。
その痛みと苦難を乗り越え
再びプレーヤーとして輝きを放ったところも、共通している。
そして今、「レジェンド」折茂は
ここまで10勝28敗と苦闘するレバンガを
B1残留という現実的かつ絶対的なミッションに導くための
キーマンの役割が求められている。
2月のホーム戦は2試合のみ。
残り3分の1となるリーグ戦を戦い抜くきっかけを作りたい。
一方、「ミスター」佐古は、今月行われる
FIBAワールドカップアジア地区2次予選の
最後の2試合、イラン、カタール戦に
アシスタントコーチとして臨む。
現在日本はグループ3位。
この順位を維持できればワールドカップ出場権獲得。
そして、東京五輪の出場にも大きく前進する。
どちらも正念場。
レジェンドとミスターはそれぞれの立場で
手に汗握る「運命の2月」を戦うことになる。
一時代を築いた二人が、
今度は新たな時代を開く力となれるか。
レバンガ北海道対新潟アルビレックスBBは
2月9日(土)、深夜0時57分からTVhで放送。
そしてその翌週からBリーグは中断し
日本代表の最終決戦モードに突入する。