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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

「種を蒔いた人」との再会

レバンガ戦の実況を終えた翌日の

同カードの2戦目。

どうしても、ひと声かけたかった人がいた。

   

対戦相手、川崎ブレイブサンダースの

勝又穣次アシスタントコーチだ。

勝又AC.jpg

   

2008年シーズンから

レバンガの前身(運営会社としては別のもの)である

レラカムイ北海道に所属し

3シーズンプレーした。

196センチ、105キロのサイズを生かし、

身体を張った、泥臭いプレーで

「縁の下の力持ち」のような存在感を見せていた。

ボールに触れる機会が少ないときでも

身体中からエネルギーがみなぎっているのが伝わっていた。

   

練習ではいつも全体練習が終わったあと、

フリースローやシュート練習を

黙々と繰り返していた。

普段の立ち振る舞いも含めて

「ひたむきに」「真摯に」バスケットボールに向き合う選手ということが

ひしひしと伝わる好漢だった。

   

加入2シーズン目の09-10年シーズン中に

シュートの利き腕を左に変えた。

「いつもの」居残り練習でそれがわかったとき、

少なからず驚き、そして感心した。

国内トップリーグに所属するレベルの選手が、

シュートの利き腕を変える。それもシーズンの途中で、

というのは、かなり珍しい。

でも、プレーヤーである以上、大事なのは

「今より少しでもうまくなること」。

その一点に向かって迷わず実行する姿勢は

ある意味、最も彼らしいと感じたことを覚えている。

  

そのシーズンは(も)、チームは低迷した。

屈辱的な負け方を何度も目にし、

ささくれだった気持ちのまま会場を後にすることも

しばしばあった。

その最終戦。

彼は、トップリーグに在籍6年目で

初めての3ポイントシュートを決めた。

放ったのは、もちろん左手からだ。

勝又3P①.jpg

  

会場から上がった歓声の大きさは間違いなく、

その試合で一番だった。

相手チームは、

まだ勝負どころではない中盤での得点だったので、

なぜそんな歓声となるのか

おそらく意味がわからなかったかも知れない。

でも、負け試合を何度見せられても足繁く通い続けた

当時のファンは知っていた。

あの1本のスリーポイントに込められていたものを。

  

シュートを決めた後、すぐさまディフェンスに戻りながら、

小さく、右手を握りしめた彼の姿を見て思った。

「辛かったシーズンだけど、

最後まで目をそらさずに見届けてよかった」

そう思った人は、おそらく他にもいたはずだ。

勝又ガッツ①.jpg

勝又ガッツ②.jpg

 

試合後、

退任を表明していた東野智弥ヘッドコーチ

(現、日本バスケットボール協会強化委員長)が

そのプレーに触れた。

「勝又が初めてスリーポイントを決めました。

チーム状況などのネガティブな要素に左右されず、

彼が来る日も来る日も、

左手からのシュート練習を繰り返し、

それが報われたプレーです。

これは決して、小さなことではない。

皆さん、どうかあのシュートのことを、覚えていてください」

北陸高校の先輩でもあるヘッドコーチが示した、

最高の賛辞にして、惜別の言葉だった。

  

2011年に東芝(当時)に移籍し、

2014年シーズン後に、現役を終えた。

引退後即、アシスタントコーチに就任して4シーズン目。

リーグを代表する強豪チームで

「必要とされる人物」であり続けているのが、

また彼の人間性の証だろう。

  

北海道を離れてから結構な歳月が流れたが、

彼が選手、コーチとして

バスケットに関わってくれているおかげで

年に数回は、会場で会えている。

2017-18シーズンのこの対戦(レバンガVS川崎)の

北海道での試合はこの日が最後なので

記念の一枚を撮らせてもらった。

勝又&タカさん&大藤②.jpg

  

レラカムイ時代、

アシスタントコーチ兼通訳という立場で「戦友」だった、

清永貴彦、レバンガ北海道チーム統括(左)との3ショット。

当時の記憶が蘇る1枚となった。

勝又&タカさん.jpg

「あの」試合のコート入場シーン。右が清永AC。後頭部が見えているのが東野HC

  

誕生したばかりのプロバスケットボールチームが

北海道でどうなっていくのか、

期待と、同じぐらいの不安を

いつも感じながら過ごしていた。

だからこそ、彼の「あのスリーポイント」は

鮮明に記憶に残っている。

  

バスケットボールというスポーツと、

それをプレーするプレーヤーの

深みや味わいを感じさせてくれたという意味で、

あのスリーポイントは、

北海道にプロバスケットボールというものの

存在価値や魅力を伝える、

小さな一粒であっても、大切な「種」だったと思っている。

 

この日、北海きたえーるに詰めかけた観衆は

今シーズンここまで2番目の5479人。

この2試合で、平均観客動員数はB1リーグ18チーム中、2位に浮上。

Bリーグが最も重要視する観客動員において

完全に「フロントランナー」となっている。

  

また、単にたくさんの人が来たというだけではない

「北海道のスポーツをみんなで楽しむ」

一体感に包まれていた。

プロ野球・ファイターズとのコラボレーションデイで

栗山監督も観戦した効果もあるだろう。

それもまた、

プロ野球とコラボする価値が認められたという意味で

クラブとして進歩している証拠でもある。

栗山来場.jpg

  

あの頃蒔いた種が、

いくつかの風雪に耐え、確実に育ち、

花や実をつけようとしている、

そう思わせる2日間だった。

 

「すごく盛り上がってましたね」

穏やかな笑顔でそう振り返った

アウェーチームのアシスタントコーチ・勝又穣次。

貴方も、種を蒔いてくれた大切な一人です。

また、会いましょう。

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