温故知新
昨年のことになってしまいましたが、
自分の気持ちを整理して
2018年に入るためにも
書かせていただきます。
先月半ば、会議に出席するため、
名古屋に出張しました。
もちろん仕事で行ったわけですが、
この地に足を踏み入れることは、
やはり、特別な気持ちになります。
大学卒業後、12年を過ごした街への"帰還"。
偶然にも1年で2度、訪れることになりました。
宿泊したのは
名古屋市中区の「大須観音」の目の前。
浅草観音、津観音と並び、
日本三大観音といわれる格式高き観音霊場。
27年ほど前、社会人になったばかりの若僧の私が
「名古屋に住むからには、
知っとかんといかん有名なお寺さんだで、
ちゃんと見とかんとあかんよ」
と言われ、新人研修の一環で連れて行かれた場所。
当時と変わらず、群がる鳩に餌をやる参拝客でにぎわっていて、
鳩たちを避けながら、
中継用のケーブルを巻く作業を手伝ったことを思い出しました。
ここには、名古屋市で有数の歴史を持つ
大須商店街があります。
私がいるころは、昔ながらのお店が多く、
正直、ちょっとくたびれた感じがする商店街という印象でしたが、
今回歩いてみると、
老若男女、さらには海外からの観光客も楽しめる
多彩な店が軒を連ねていて、非常に活気がありました。
長い歴史と、現代の流行が混在する
心地よいカオス、とでもいいましょうか。
昼食に選んだのは、
名古屋名物、ひつまぶし。
ただ本格的なものは、かなり敷居が高いので、
ランチタイムメニューの「ミニまぶし」をいただきました。
軽い腹ごなし程度のものですが、
「ひつまぶしを食べたぁ!」と実感することが
何よりの目的なので
3種類の食べ方を、じっくり堪能いたしました。
夜、ホテルに戻る道すがら。
「名古屋らしさ」を感じる、
私が住んでいた当時はなかったものに出会いました。
御三家筆頭、尾張藩の第七代藩主、
徳川宗春の像。
質素倹約を重視する当時の将軍、吉宗とは正反対の、
消費の奨励による経済活性化を図った人。
遊郭や芝居小屋を名古屋で公認したことで
出番を失った江戸や上方の役者や芸人が集まり、
「芸どころ名古屋」が花開きました。
名古屋の街ににぎわいをもたらしたことへの
オマージュを表れでしょう。
かと思えば、こんなものも。
2008年にノーベル物理学賞を受賞した
益川敏英さんの手形。
名古屋生まれの名古屋育ち、
名古屋大学で博士号を取得し、
同じく名古屋生まれの小林誠さんとともに
ノーベル賞を受けた方。
これまた、地元出身の偉人への
敬意の表れなのでしょう。
久しぶりに訪れてこういうものに出会うと、
そこに住む人たちの心模様が伝わってきて
「地元の人たちの生活に寄り添うアナウンサーになれ」と
教えていただいた若き日を思い出し
なんだかうれしくなります。
帰りはお約束の
名古屋駅のシンボル「ナナちゃん」をくぐってから
空港へ。
限られた時間の中で、
できる限り、心に残るものにしよう
...こういうときは得てして計画がまとまらず、
結果、行き当たりばったりになるものですが、
その通りの道中となりました。
ただ、たくさんの刺激をいただいたということで、
月並みな表現ですが、
「温故知新」の実り多き滞在だったと感じています。
活気と先進性にあふれていた名古屋の街に
「故」の文字を使うのはちょっと気がひけますが。
2018年も、自分の原点、足元を忘れず。
されど、過去に縛られず、進取の気持ちで
歩んでいこうと思っております。