25年目に寄せて
気がつけば、そんなに時間が流れたのか。
驚きと、少しばかりの感慨がこみ上がる。
25年前の1993年、春。
入社3年目の若造アナ。
(若手と呼ぶのもおこがましい、
まさに「若造」と呼ぶのがふさわしい、とんがり具合だった)
その当時、毎日を支配していた感情は
「ああ、俺は新しいプロスポーツの
スタートの瞬間から、
取材や中継で、目の前で関われるんだぁ、
なんて幸運なんだ」
と同時に、
「どんなにベテランのスポーツアナだって
スタートラインは皆いっしょ。
頑張り次第で、自分だって勝負できるフィールドが
こんなタイミングで始まってくれたんだ」
も、ちょっとだけあった。
今考えるとそれは、
限りなく「浮つき」に近い「高ぶり」。
始まってみてすぐにその浮つきに気付き、
恥ずかしくも情けない気持ちに変わったが、
それもまた自分の足元をみつめるきっかけになった、
若造時代にしか抱けなかった懐かしい感情だ。
あの時、華やかに幕を空けたJリーグは、
今年、「四半世紀」という節目を迎える。
その開幕を前に
先月もらった、一枚の葉書を
もう一度見つめてみた。
第95回全国高校サッカー選手権大会で優勝した
青森山田高校サッカー部の
黒田剛監督からいただいた葉書。
名古屋時代の、90年代後半、
高校サッカー中継に携わっていた頃、
当時「青年監督」だった黒田監督率いる
青森山田高校を取材し
試合を実況する機会があった。
高校サッカーの新時代を築こうと奮闘する
若き黒田監督の姿に、
「俺もこの世界で生きていきたい」という
自分の心情を重ねながら関わっていたので、
今回の栄冠にいてもたってもいられず
お祝いの手紙を書いたところ、
ご丁寧に返事をいただいた。
まず、そのお心遣いに感謝。
そして、当時のことを覚えていただいたことに、また感謝。
さらに、葉書の隅にしたためられた言葉に
心を打たれた。
「また一から頑張ります」
就任22年目で頂点を極めた、黒田監督。
その歩みは、この言葉を
いつも心に宿してきたものだったのだろう
ということが、しみじみ伝わってくる。
そして全国の、サッカーに携わる全ての方々の
草の根のたゆまぬ努力の積み重ね
まさに「また一から頑張ろう」の積み重ねで、
日本のプロサッカーリーグ、Jリーグは
25年目を迎えるのだということを
この言葉で再認識した。
更にいうと、
「一から頑張ろう」
「また一から頑張ろう」
若造アナがそんな気持ちで
毎日サッカーと格闘していた時間も、思い出した。
25年の歳月の中で
仕事としてのサッカーとの関わりは
様々に変化してきたし、
これからどう関わるかもわからないけど、
あの気持ちだけでも、もう一度胸に刻んで
この1年を過ごしてみたらどうか。
この一枚の葉書には、
そう伝えているように受け止めている。
ましてや今季は、北海道コンサドーレ札幌がJ1だ。
日本のサッカーの頂を占めるクラブの戦いを
身近で見られる、5年ぶりの機会だ。
いろいろなことに心をめぐらし、
「また一から」
この1年を過ごしたいと思う。