"アンビシャス"に寄せて
今月16日、
ファイターズの今季のスローガン発表に行ってきた。
去年も取材し、このブログに書いたら
↓
https://www.tv-hokkaido.co.jp/announcer/daito/2016/01/post-116.html
10年ぶりの日本一という結果になったので、
ゲン担ぎの思いも込めて。
既にご存知の方も多いと思うが
今季のスローガンは「F-AMBITIOUS」(ファンビシャス)。
かのクラーク博士が「Boys, be ambitious」の名言を残してから
今年で140年ということにもちなみ、
ファイターズとファンの頭文字「F」を組み合わせてた造語。
そこには
「力ではなくて、中身が世界一の球団になりたい。
ファンも私たちも、
そこに志を置いていきたいという思いを込めた」
(栗山監督)ということだ。
クラーク博士が札幌農学校時代に残した言葉で
「Boys,be ambitious」はあまりに有名だが、
実は「Be Gentleman」(=紳士たれ)
という言葉も残していて、
実際には、こちらのほうが
クラーク博士の哲学や信念を
より明確に示したものであったようである。
栗山監督はこの言葉にも触れながら、
こんなエピソードを披露した。
「スポーツキャスター時代、
メジャーリーグのトップ選手と話す機会があり、
『メジャーとマイナーの一番の違いはどこにあるのか』と質問したら
こんな答えが返ってきたんだ。
『子どもたちに尊敬される振る舞いができるのが
メジャーのプレーヤーさ』。
それって、ジェントルマンっていうことだよね。
中身が世界一の球団を目指していくって
そういうことだと思う。
普段の生活の立ち振る舞いも含めて、
更に前に進んでいくことを目指す。
そのためには、志って大事。
志がないと、人間って頑張れないものだよね」
この話を聞いたとき、今月11日の
「ゆうがたサテライト 道新ニュース」で紹介した
ソフトバンクに2位指名で入団した
幕別町出身の古谷優人投手の姿が浮かんだ。
彼がプロになるにあたって立てた誓いの言葉は
「世の為 人の為」。
これから、生き馬の目を抜くプロ野球の世界に飛び込んでいく
若者が掲げる目標としては
少し風変りに映る人もいるだろう。
古谷投手には、8歳下の妹がいる。
先天性の脳障害があり、
現在も身体の一部がやや不自由で
言語障害なども残るという。
生まれたばかりの頃は
「歩行や会話は難しいかもしれない」と言われた。
そんな妹は、兄がプレーする球場に足を運び、
いつも応援してくれた。
彼は、中3で野球部をいったん引退した際、
病院での妹のリハビリを手伝った。
そこで、障がいと闘う多くの人の姿を目にしたことが、
高校での進化の源となったという。
「好きなことをしたくても様々な理由で
できない人もいる。
自分は好きな野球が思う存分できているのだから、
そんな人たちに野球で力を与えたいという気持ちが
強くなりました」
そして、こう考えるようになった。
「妹の存在があって、ここまで人間として成長できた。
プロ野球選手になれたのは、妹のおかげなので、
これからは何らかの形で返していきたい」
それが、「世の為 人の為」という意思表示の背景である。
多くのトップアスリートは、
社会福祉活動を自らの活動の重要な柱と位置付けているが、
まだプロで一球も投げていなくとも、
「子どもたちに尊敬される振る舞い」という意味では
プロフェッショナルとして必要なものは、既に備えている。
志=ambitiousはもう抱いているし、
その姿は、Gentlemaである。
あとは、志に相応の実力をつけ、示すのみ。
そこが一番難しいことではあるけれど、
いつの日か、かなえて欲しいと思わせる青年である。
皆さんも、彼―古谷優人の名を
心に留めておいていただければ幸いです。