ブカツノキセツ
この時期、
大人になってからは
「ビールがうまい季節だよなあ」が
思わず口をついているけど、
高校生までは
「部活だあ...部活」ってつぶいやいていたなあ。
メンバーで一番ベストタイムが遅く、
そのくせケガはしたことのない、
ゆえにサボることのできない
へなちょこ陸上部員にとって、
ちょっぴり憂鬱な気持ちをこめて。
今年も実況することになった
「北海道中学校バスケットボール大会」の実況に備え
札幌地区大会の取材へ。
1年に一度の中学生の競技大会の実況なので、
本番の"部活"全開の空気に備え
あらかじめ身体と心を慣らすことも兼ねた、
ここ数年の恒例行事である。
その日最初の試合から、大熱戦。
3点のリードを許した試合最終盤、
残り試合時間がゼロになると同時に放った
3ポイントシュートが決まり、土壇場で同点に。
延長戦を前にしたベンチでは、
シュートを決めた選手と抱き合って喜ぶベンチメンバーの破顔一笑と、
そのプレーの直前にフリースローを外していたチームメートの
安堵の号泣が交錯する。
そして延長戦の末、追いついた側が劇的な勝利。
数分前まで勝利が目前だった、敗れた側の沈黙と
手放す寸前だった勝利を手繰り寄せた側の歓喜が交錯する。
これです。
これぞ「ブカツ」というひとこま。
「ここまできたら、うまいかどうかじゃないんですよね。
気持ちを切らさず、手を伸ばす、足を動かす。
最後までなんとかしようと、やりきるほうが勝つ。
今年のうちのチームには、それが足りなかったです」
その試合を見ていた、別のチームの指導者の言葉。
これです。
これも「ブカツ」のひことま。
自分の知り合いが出ている試合でもないのに
気づかないうちに、見ているほうも思わず力が入っていて、
一試合終わったあとに押し寄せる疲労感。
闘争心むきだしのプレーに関心したあと、
次の試合に備え、通路に座って仲間たちと弁当を食べているときの
屈託のない笑顔を見て
「ああ、やっぱり中学生だなあ」と気づく瞬間。
それらすべてが、「ブカツ」のひとこま。
泣いて、笑って、大声出して、汗かいて、
目いっぱい身体を動かして、泥のように眠る。
そして、新しい朝がやってくる。
それなりの不安や重圧もあったりするけど、
翌朝の目覚めはすっきりしていて
なんとなく、それらは消えている。
当時はそれに特別な感情を持ったりすることはなかったけど、
実は、とても愛おしい時間だったと
感じるときが、いつかやってくるだろう。
でもそれは、「いつか」でいい。
今はありのまま、ブカツに浸ればいい。
来月上旬放送の
「第46回 北海道中学校バスケットボール大会」
そのときには全道から集まった
ブカツ真っただ中の中学生たちに会える。
会場全体に充満する
ちょっとうっとおしいぐらいの「ブカツ熱」を
今年も満喫させてもらい、
彼らの奮闘を、伝えさせてもらおう。
「あしたの練習は9時からです。
みんな、遅刻しないように。
では、解散!」
「ありがとうございました!」
大会途中で敗退し
新チームのなったどこかの学校だろう。
会場の片隅から聞こえた声に
思わず背筋が伸びてしまった。
これもまた、ブカツのひとこま。