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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

ともに歩む、道標

彼を知る人のために予め言っておくと
合成の画像ではない。
その夜実現した、
ちょっと不思議な、でも深い意味を持つ瞬間を写したものである。

近くまで行って撮影することができなかったので
翌日のスポーツ新聞に載った写真でお許しください。

小野始球式②.jpg

小野始球式①.jpg

4月27日、札幌ドーム。
プロ野球、ファイターズ対イーグルス。
試合開始を告げる恒例の始球式の一球を投じたのは、この人。
サッカーJ2・北海道コンサドーレ札幌の
小野伸二選手(36)。
サッカーをちょっとでも知っている人なら、いわずもがなの
「天才・シンジ」。
サッカーにあまり明るくない方のために簡単に紹介すると
「天才・シンジ」。
すくなくともJリーグ誕生以降の
この20年ぐらいでいうなら、
ボールコントロールとプレーのアイデアでは
彼の右に出る選手は未だ出てきていないとも言われる
日本サッカー界の至宝。
何より、「サッカーって楽しそうだな」と、誰もが思えるプレーをしてくれる。
漫画「キャプテン翼」でお馴染みの
「ボールはトモダチ」というフレーズを
実際にやってのけてしまう、無二の存在。

ワールドカップを3度経験した実績はもちろんのこと、
オランダ、ドイツ、オーストラリアと
プレーした海外各国でもそのテクニックとアイデアは絶賛されている、
そんな小野伸二が今、北海道にいる幸せ。
我々は誇っていい。

小野選手にとって、人生初の始球式。
まるでボールに意志があるかのように
あんなに自由に扱うサッカー選手が、
あきらかにぎこちなく
野球のボールを「投げる」動作を披露する。
そのたっぷりの違和感が、とても新鮮。
事前にたっぷり練習してから臨んだそうだが
「人(打者)が立っていたので、当てたらいけないと思った」ということで
投じたボールは大きく浮き
キャッチャーが飛びついてキャッチする「大暴投」に。
...この結果がまたいい。
投げ終わったあと、
「生涯立つことはないと思っていた」というマウンドの土を
自然に、そして丁寧に右手でならして戻っていく姿が、またいい。
(すいません、画像がありません)
小野囲み①.jpg

野球選手にとって、投手にとって、
マウンドがいかに真剣な職場であり、神聖な場所であるか、
認識できているからこその行為。
自分がしているものとは違うスポーツでも
その本質をとらえる能力、
そして、それらの競技をリスペクトしようとする姿勢が自然に出る。
真に一流のアスリートの所作だと思う。

小野囲み②.jpg

Jリーグが誕生した1993年。
当時、社会人3年目だったが、
社会のサッカーに対する熱気はよく覚えている。
同時に、「黒船襲来」などと言われ、
プロ野球が国内のメジャースポーツの座を脅かす存在とみなし、
戦々恐々としていた空気も、よく覚えている。
それに端を発したからなのかはよくわからないが、
「野球派」と「サッカー派」などと言われる、
双方のスポーツのファンが、
互いを相容れない存在とみなしているということも耳にした。

野球でスポーツの面白さ、奥の深さに「目覚め」
サッカーと出逢うことで
その面白さや奥の深さに「広がり」があることに気づき、
今の自分を形成する上で、
どちらも欠かせない存在と思っていた自分にとって、
そんな対立は不毛で、残念なことだと
強く感じたことを覚えている。

競技の性質はもちろん違う。
しかし、どちらに魅力があり、どちらにない、というものではない。
どちらも、素敵なスポーツ。
それに気づけないことのほうがもったいない。
すべてのスポーツに必ず存在する、
人の心をつかんで離さない魅力を、
競技人口の多い、少ない、
メジャーかマイナーかに関係なく
(そもそもこの表現が大嫌いだ)
探して、伝える。
それを、自分のライフワークにしたいと思った
ひとつのきっかけだった。

ファイターズとコンサドーレ。
札幌ドームを本拠とする両チームで
コンサドーレの選手がファイターズ戦の始球式を行ったのは
この日が初めて。
ファイターズが北海道に来て、12年目で初。
もっと早く、実現するべきだった。
これからもっとたくさん、実現していって欲しい。
そして逆も、もっと行われて欲しい。
コンサドーレの試合前、ファイターズ選手によるキックオフセレモニー。
キッカーは、赤黒のユニホームを着た、大谷翔平。
蹴るのは右足か、左足か。
想像するだけでワクワクする。
そして、この言葉が浮かぶ。
「プロ野球とプロサッカーと両方あって、
北海道にいて、幸せだ」
それは、この二つの競技だけの話ではない。
「スポーツが豊かな北海道で
我々は、幸せだ」
という叫びにつながるべきだ。
広大な土地があり、自然が豊かで、
四季がはっきりしているこの北海道は
あらゆるスポーツを楽しめる条件がそろっている。
スポーツを「観る」可能性が
もっと広がっていい。

日本サッカーの「至宝」が投じたこの一球が、
ともに歩む道標でありますように。
...なんて考えていたら、大谷のバットが炸裂し逆転3ラン。
そうそう、これが、
「北海道にいる幸せ」なんだよ。

大谷3ラン.jpg