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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

9年目の春

入学式シーズンたけなわ。
背負っているというより「背負われている」、
身の丈に合わないピカピカのランドセル姿や、
まだなんとなくしっくりこない新しい制服姿が、
街に活気をもたらしてくれる季節。
初々しい春を迎えている彼ら、彼女らは、
「9年先」の自分を、想像できるだろうか。
小学校入学なら、義務教育が終わるころ、
高校入学なら、社会人となって数年が過ぎ、
職場に後輩ができるころの、自分の姿。
きっと、遥か先すぎる話だろう。
そんな9年という歳月を超えて
ここにも、新しい季節がやってきた。

国内トップリーグ・NBLに所属する
プロバスケットボールチーム・レバンガ北海道が
4月3日の試合で、今シーズンの8位以上を確定させ、
プレーオフへの進出が決定した。
2007年に前身のチームが産声を上げて以来
苦節9年を経ての、初のプレーオフ進出である。

PO進出決定②.jpg

アウェーの西宮戦に勝利して決定。
西宮の指揮官はかつてチームスタッフとして苦難をともにした上田HC。
運命的なものも感じる歓喜の瞬間だった。

傍らで取材してきた立場としては、
軽々に「苦節」という言葉で片付けたくない、
そんな9年の歳月だった。
母体のチームを持たず、
運営会社もチームもゼロから立ち上げ、
経営も、編成も、コートマネジメントも
「産みの苦しみ」も散々味わった。
更に、途中で経営難に陥り、リーグから除名処分通告。
チーム消滅の危機、すなわち
北海道からプロバスケットの灯が消える危機を救ったのは、
リーグ最年長にしてトッププレーヤーである
一人の選手の決断。
新会社のトップに自らが立ち、
選手兼経営者となって、
再スタートを切ることだった。
そんな前代未聞の選択はしかし、
予想されたことではあったが、更なる茨の道の始まりだった。
北海道という地方で、
メジャースポーツとはいえないバスケットボールの
プロのチームとして運営させ、
なおかつ、大企業の福利厚生の一部として
安定的な運営が可能なチーム
(それゆえ、親会社の経営悪化が要因で
活動停止になった名門チームもあったが)とも、
コート上では問答無用に戦わなければならない、
ときに不条理とも思える現実とも向き合ってきた。
そんな条件下でも
過去2度、プレーオフ進出まであと一歩まで迫ったこともあったが、
バスケットボールの神様は、微笑まなかった。

ときは流れ、2016年春。
ついに、扉は開かれた。
コート上では、
持ち味の惜しみないハードワークからの厳しいディフェンス、
そして普段の練習の中では
若手、ベテランの垣根なく
積極的なコミュニケーションをテーマに、
タフなリーグ戦に果敢に挑んでいった。
序盤は苦しい星勘定。
それでも「戦えている」と内容に手ごたえをつかんでいた選手たちは
中盤以降、「ケミストリー」を起こした。
チーム記録に並ぶ7連勝など
2月以降の18試合を12勝6敗で、
レギュラーシーズン8試合を残して
初のプレーオフ進出を果たした。

目ざせファイナル.jpg

月6日に行われたPO進出決定報告会。
後援するスポンサーも多数集まり
喜びを分かち合った。

折茂桜井野口&西川.jpg

前身のチーム発足時からのメンバーである
折茂(左)・桜井(左から2人目)・野口(右)と
彼らのプレーを見て「北海道のプロチームでプレーしたい」と志した
大卒2年目の西川(右から2人目)。
9年の歳月を象徴する選手の並び方だった。

その戦いの中に、彼はいなかった。
9年前、北海道に降り立ち、
あらゆる禍福の中心にいた、
リーグ最年長選手にして運営会社取締役社長、
折茂武彦は
11月の試合中に右足甲を亀裂骨折。
長い選手生活の中で初めてという長期離脱を余儀なくされた。
それでも、シーズン中の復帰を目指し
手術という選択は取らず、骨密度を高める注射を打ち、
地道に、回復を待った。
チームが進撃を続ける中、
コートに立てない、チームに貢献できない
歯がゆい「雌伏の時間」を味わった。

プレーオフは、5月半ば。
すでに骨折は完治した折茂選手は、
そのときに向け動き出している。
折茂トレ①.jpg

「シーズン前のきつい体力トレーニングを
この時期にもう一回やっているようなもの。
おかげで、だいぶいい身体になりましたよ。
人様の前にも出せるくらいです」
折茂トレ②.jpg

軽やかな口調は、
自分がいない間に、着実に成長を遂げた若手たちへの頼もしさと、
大舞台で、自らコートに立てる見込みがついた
心の高ぶりの裏返しか。

9年あれば、人は変わる。
チームという生き物もまた変わる。
挫折も失意も味わったけど、
それらは、後退ではなかった。
全てが、前を向き、今を駆けるための、糧だった。
当時の「うぶな」姿を覚えている人は多くはないかもしれないけど、
歳月を経て、大人になった
北海道のプロバスケットボールの今を、見届けておきたい。
秋からは、日本のプロスポーツの「第三の波」
Bリーグが始まる。
ここまでの苦難の道が、そこにつながっているのだから。

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