予定調和にあらず。
「今シーズンの目標をお願いします」
たいていこれは、
アスリートへのインタビューの最後に聞く「締めくくりの質問」で、
「優勝です」「表彰台に立つことです」
「ベスト8です」「プレーオフ進出です」
「全国大会に出て、一つでも多く勝つことです」
といった、より具体的な言葉(数字)が出てきて
「ありがとうございました」で終了。
よく言えば「おさまりのよい」「無難な」、
悪く言えば「予定調和」「面白みのない」やりとりである。
あくまでこちらの経験ではあるが
そうではない、「おや?」と感じる答えが返ってきたとき、
何かをやってくれる期待と
その期待に適う結果が出る確率は、高い。
10月11日に
NBL2015-16シーズン開幕を迎える
バスケットボール・レバンガ北海道。
今季から指揮をとる水野宏太ヘッドコーチの
開幕戦直前の練習終了後の答えに「おや?」
「今シーズンの目標は?」―「闘うことです」
2016年秋からの新リーグ「Bリーグ」で
1部参入が決まっているレバンガは、
その参入基準を維持するために、
今季は身の丈にあった、といえば聞こえはいいが
制限された予算内でのチーム運営を余儀なくされる。
ゆえに「現実的な目標はプレーオフ進出ですね」...という
こちらの「予定調和」を、彼は否定する。
「具体的な、数字で示せる目標を設定すると
必ずそこを下回ります。
『限界を、自分たちで定めないで闘う』、
それが最低限の目標ということになります。
今までだって、プレーオフ進出が目標、と言っていて、
一度も実現していないという事実があります。
具体的な数字を持ち出すなら、
あえて優勝とか、ファイナル進出とか、トップ4とか出せますが、
実際には、そうしたものに挑戦するに値するチームであり続ける、
ということになります」
限界なんて、いつも目の前にぶら下がっているものだ。
そこを、いつでも突破する。
具体的ではないが、抽象的でもない。
自分たちを客観視し、状況分析を十分にした上で、
数字で表現する以上の「実行のイメージが湧く」目標。
「実現性への距離感が適切」
とでも表現すればいいのだろうか。
真のプロリーグが始まる来年秋から、
日本のバスケットは新たな時代に入る。
今季は、その移行に費やす期間とも、準備期間とも言われる。
だからといって「無為に過ごしていい時間」ではない。
むしろその逆。
「新時代に期待を持ってもらうためのものを示すシーズン」だ。
今季のチームのスローガンは、その意志を示す上で適切だと思う。
「限界突破」。
1年後、トップリーグにふさわしいチームと、ホームタウンであるためには、
私たちの「観戦力」のハードルも上げる必要がある。
いつでも選手たちは「限界突破」に挑んでいるか。
心して、見届けていくことにしよう。