こらえられないからこそ
悲しい時に流す涙は、その限りにあらず。
うれしいとき、感動したとき、報われたと思ったとき。
そんなときに流す涙は、
それを見ている人の心を洗い流す浄水のような効果があると思う。
特に、"いいおとな"の涙
―年齢とか、社会経験とか、立場とか、体裁とか
普段いろんなものを背負ってしまっている人のそれをみると、
「こらえたくても、こらえられない事情」が伝わってきて、
胸に迫るものがある。
来年秋から始まる
新しいプロバスケットボールリーグの
1部から3部の「階層分け」の最終発表が
今月29日にあり、
1か月前、「継続審議」とされた
北海道唯一のプロチーム・レバンガ北海道が、
残り6チームの1つに入り、
晴れてトップリーグである1部に参入することが決まった。
45歳の選手兼社長。
究極の「二刀流」折茂武彦選手が
発表直後に流した涙。
これぞ"いいおとなの涙"だ。
プレーヤーとして、今なお日本バスケ界のレジェンドでありながら
「もし2部でプレーせざるを得ないことになれば、
自分のプレーヤーとしてのプライドが、それを許すかどうか」
と発言し、選手としての進退もかけた。
もちろん、経営者としての責任もかけた。
何より、縁もゆかりもない北海道に
「新たなバスケットボールの灯を点す」べく
この地で費やしてきた8年の歳月。
更に、志を形にするための過程で
この地で出逢った多くの人々たちの顔。
いろんなものを背負って、あの瞬間を迎えた。
「だから、こらえられないんですよね」
そう胸の中でつぶやいていた。
「僕より長く現役をやっている選手がいない以上、
僕より長く日本のバスケットのトップリーグを経験している選手はいない。
だからこそ、今回のリーグ再編は
ようやく日本のバスケットボールが迎えた"表"に出るチャンスと実感する。
だから、レバンガが1部から始まることに、意味がある。
北海道の子どもたちが
バスケットをやりたい、プロでやりたい、と思ってもらう
目標になるためには、1部で始めたかった。
これからは、1部にふさわしいクラブであるため
経営、強化、そしてプレーに
更に力を尽くしていきたい」
涙の後には、この言葉。
またいろんなものを、背負っちゃうんだなあ。
だから、次にこらえられない涙を見せるときは
心からの、うれし涙でありますよう、お祈りします。