夏の始まり
大学卒業を控えた、24年前の2月。
新たに始まるプロスポーツに
卒業後に暮らす街のチームが加わることが決まり、
胸を躍らせたことを今も覚えている。
「新しい仕事ができるぞ」という現実的な期待と
「スポーツを取り巻く日本の構図が変わる」という、
願望に近い高揚感。
"Jリーグ"のインパクトは
それぐらい、若い自分には強かった。
あのときからかなり齢は重ねたけれど、
できれば同じような思いを
夏の札幌で味わいたいと念じ、会見場へ足を運んだ。
来年秋から始まる
バスケットボールの新リーグ。
長年の課題であった、2つのリーグの並立が解消されて
真のトップリーグが誕生する。
その、1~3部までの階層分けの発表が、7月30日、東京であり、
北海道から参入を申請しているレバンガ北海道は
その模様の生中継と記者会見を行った。
会場は、商業施設のアトリウム。
夏休みのこの時期に、あえてこうした場所で行うところに
球団側の強い決意と、期待が感じられた。
今回、1部に参入する12チームが発表され
そこに、レバンガの名はなかった。
リーグ側が設定した、1部参入のための運営面の条件を
満たすことは今回はかなわなかった。
「北海道のバスケットボールの灯を消さない」
その信念のもと、
現役選手と社長業を兼務する、
日本のバスケット界のレジェンド、45歳の折茂武彦選手も
無念の表情でこの発表を聞いた。
でも。これは試合終了のブザーではない。
8月末に、今回確定しなかった
所属分けの最終発表がある。
残り1カ月で、課題をクリアすれば
あと4チーム前後とされる、
1部リーグ入りへの切符を手にするチャンスはある。
「日本のバスケットが世界に打って出るためのリーグ」
Jリーグ創設時に全く同じコンセプトを掲げていた
川淵三郎・新リーグチェアマンは、
今回の会見中もこう強調していた。
バスケットボールというスポーツの潜在能力を考えれば、
それは決して妄想ではないと思っている。
24年前に自分が感じた高揚感と同質のものを感じるし、
あれ以降、様々なスポーツを取材し、
実況した経験も合わせた実感である。
だからこそ、トップリーグ元年は1部で迎えたい。
初めての年ならではの"熱"の中にいることで、
プレーヤーにも、ファンにも、盛り上がりのスイッチが入っていく。
そしてそれは、バスケットとは一見無関係な人や
他のスポーツ界をも刺激し、
様々な相乗効果を生んでいく。
名古屋でJリーグ元年を迎えたときに、肌で感じた経験だ。
あと1カ月。
1部参入に向けて、レバンガの夏の戦いが
きょうから始まった。
コートでボールは動かないけど、たくさんの汗が必要な
熱い夏の戦いだ。
"あきらめたら、そこで試合終了ですよ"
1か月後、歓喜に包まれるそのときを信じて―。