こもってます
熱がこもった体育館で
熱のこもった声援を受けながら
熱をほとばしらせながらプレーする中学生たちを見ると、
少々へばり気味で会場に着いたはずなのに、
帰る頃には身体の中に一本芯が通ったような感じになる。
毎年味わうこの感覚は、とても心地いい
来月実況することになっている
「北海道中学校バスケットボール大会」に向け
札幌地区大会を取材してきた。
今年、札幌の男子を制したのは
中等部が今年度を持って廃止となる、
つまり、3年生部員だけの
東海大四高中等部。
助っ人一人を合わせても、部員6人で迎えている
文字通り「最後の夏」には、まだ続きがある。
女子は、同点の残り30秒から勝ち越して接戦を制した
札幌東月寒中。
全道大会の実況は、今回で6年連続になる。
ということは、最初にしゃべった時の選手たちは
もう20歳を超えた。
あの時、少年、少女のまっただ中だった彼ら、彼女は
成年となった今も、バスケットボールを手にし、
コートでドリブルをついているのだろうか。
トップアスリートでなくたっていい。
そもそも一握りの人しかなれないから"トップ"アスリートなんだから。
ケガや、様々な事情から、プレーヤーとしては
志半ばで終ってしまっている人もいるかも知れない。
それも、受け入れなければならない
「スポーツの一部」という面もある。
気になるのは、今どうしているかということより
好きで始めたバスケットボールというスポーツの
「ファン」であり続けているか、だ。
「ああ、昔はやってたよ。今はとんと興味はないけど」
「思い出したくないね。いい記憶がないから」
こんな不幸な関係であって欲しくない。
「遊びだけど、プレーはときどきするんだ。楽しいから」
「プレーはもうしないけど、観るのは今でも好きだよ。楽しいから」
「昔の自分の体験を話したら、子どもが始めたんだ。楽しいから」
「この間孫と一緒に試合を観にいったんだよ。楽しいから」
こんな段階を踏んでいくのが、
その競技にとっても、競技に関わった人にとっても、幸福なことだ。
そして、競技と観戦者がこんな繋がりになるために
ささやかながら貢献するのが、
スポーツ実況の使命だと、いつも思っている。
会場の熱気、
選手たちの汗、声、表情を見ると
その思いを新たにする。
一人でも多くの人が
生涯、「現在進行形」で
バスケットボールのファンであり続けてもらえるように。
今年も、そんな願いのこもった実況を心がけようと思いつつ
体育館を後にした。