ハコの中のお仕事
若い頃から中継番組に携わることが多く
屋外の開放的な...といえば聞こえがいいが
ときにこちらの都合を一切考慮してくれないような
過酷な...いやいややりがいのある環境が
自分の"主戦場"だと思ってきたのですが、
こちらも、アナウンサーの大事な仕事場です。
社内外のスタジオなどで行われる、ナレーション。
防音設備の整った部屋の中で
原稿と、モニターから流れる映像と、
ヘッドホンを通じて聴こえる自分の声に集中し
番組に「声で出演する」作業。
傍から見れば、椅子に座ったままで完結する、
当事者にとってはしかし、密度のとても濃い仕事です。
漫画家の方は、笑顔を描きながら
登場人物と同じように笑い、
泣くシーンを描きながら
登場人物と同じように唇を震わせながらペンを動かす、
と聞いたことがありますが、
同じような現象は、この部屋の中でも行われており、
終わった後は、口というより、顔面の筋肉全体が疲労していることを感じます。
今回は、週末に放送される2本の特番に"出演"させていただきました。
「柳沢慎吾のわがままツアー3 in 小樽・積丹」は
過去2回、"ツアコン"として現場でご一緒させていただいた番組。
一昨年秋放送「富良野・美瑛編」にて。
現場での柳沢慎吾さんのテンションがよ~くわかるだけに、
それに負けないように、部屋の中で「静かなる格闘」に挑みました。
「6時間リレーマラソンin札幌ドーム2015」は
開催当日、会場でMCをして、
これまた現場の空気を身を持って感じているだけに、
「みんなで走る楽しさをどう言葉に乗せるか」
というテーマとの格闘でした。
いみじくも、どちらにも同じ言葉を使いましたが
そう、ナレーションは「格闘」なのです。
内なる自分との格闘。
自分のイマジネーションとの格闘。
引き出しの中にある音声技術をどう繰り出し、
出来上がった映像にどう入り込んでいくかの格闘。
「ナレーションは奥が深いよ。一生ものの仕事だよ」
若い頃、先輩が教えてくれた言葉の重みを、
年を経るごとにかみしめています。
正解もなければ、到達点もない。
目指すイメージに、近づけたかなと思ったら、
また、すこし遠ざかったような気がしたり。
この揺らめきを乗り越えていく作業が、
また、醍醐味だったりします。
「柳沢慎吾のわがままツアー3 in 小樽・積丹」は
11日(土)午後8時から。
「6時間リレーマラソンin札幌ドーム2015」は
12日(日)午前10時30分から放送です。