会社魂のたましいvol.31 協和機械製作所(札幌市)
冬に出張などで本州から新千歳空港に帰ってくると、
滑走路が見事に除雪されていることに
大げさではなく、感動を覚える。
過密な運航ダイヤの間を縫い、
滑走路の状態を保つべく
「大雪のときは、滑走路全体を
雁の群れが空を飛ぶときのような隊形で
10数台の除雪車が並んで走って
一気に雪を取り除いていくんです」
藤枝靖規社長の話を聞くと、壮観で、
私たちの暮らしを守る尊い作業の様子が頭に浮かぶ。
同時に、子どもの頃に夢中で見たドラマ、
「西部警察」のオープニングテーマも頭をよぎる。
協和機械製作所は
道路や空港などの除雪機、
特に、トラックの前面に
大きなシャベルのようなものがついた
トラック系除雪機を専門としている。
当然、その技術は細部に渡っているが、
その中でも肝となるのが、
雪をかき、外側に飛ばす
プラウと呼ばれる、前面に据え付けられた
カーブを描いた鉄板。
ラッパのような、巻貝のような独特の形だが、
わずかな角度のつけ方の違いで
除雪効率が格段に違うとのこと。
職人の技術の粋を結集して製作し、
「所有者の方に許可をとってさ
夜中に、試作品の除雪車を走らせて
雪の積もった農道で
除雪の試験をするんだよ。
スムーズに雪をかき、外側に飛ばせるかどうか
てきめんにわかるんだ。
うまくいかなきゃ、もちろんやりなおし。
作った社員も、私らも緊張する、
そしてわくわくもする時間だね」
除雪車は、簡単に言うと「改造車」。
荷台のない、トラックの最小単位のような車に
様々なパーツを取り付けていく。
当然、あらゆる工作技術が、そこに詰まっている。
藤枝社長の知り合いという方が作った
大型除雪車の模型が会議室に飾られているのだが、
子どもの頃、特に男の子なら
程度の差こそあれ憧れた「働くくるま」の究極型だ。
ガラスの中にあるとわかっているが
手を伸ばして、プラウのカーブの部分を撫でたくなる衝動に駆られる。
子どもの頃から、
工場が遊び場で、工具がおもちゃだった藤枝社長。
気が付けば、父親の手伝いをするのが
幼き日からの日常になっていた。
「けっこう真剣にスポーツもやっていて、
大学に進むときに、そっちのほうを極めることも
頭をよぎったんだけどね、
『お前が跡をとる道を選ぶなら、工場を広げる』って
親父に迫られちゃってさ」
会社の将来を自分に委ねられ、
選択肢は残されなかったが、
生粋の“ものづくり人”にとって、
自然な流れの中で受け入れられたという。
そんなクラフトマン・藤枝社長にとって
一緒にものを作る社員は家族のようなもの。
みんなで、苦労も、喜びも分かち合う。
「この間も、社員全員を集めて
焼肉パーティーを開いたんですよ」
また、余暇活動として
定期的に社内で行われるのが「生け花」。
オフィスや会議室に、華美ではないが存在感のある、
そう、「生きている美」を実感させる花が飾られている。
職人気質の社員たちの集う職場としてはちょっと異質な、
しかしだからこそ、憩いの時間と空間を演出してくれる。
「みんな一生懸命働いているんだから、
息を抜くところも作ってあげないとね」
そういう藤枝社長も玄人はだしの腕前だそうだ。
手先を使って何かを生み出すことへの情熱、愛情、
そして、何かを“ともに”生み出すことの歓びを
謳歌しているような、屈託のない笑顔。
道内だけでなく、本州の空港や道路用に
除雪機を製作している協和機械。
地域ごとに、年ごとに、雪質は微妙に違い、
その違いに合わせた製品を作るべく、
雪の研究にも力を注ぐ。
「この技術は、世界水準じゃないですか?
海外に打って出るというお考えは?」
と尋ねると、
「除雪のやり方そのものが違うし、
何より、除雪機にとって大切なのは
きめ細かなメンテナンスができるネットワークの構築。
なかなかそこまでは…」
といいつつも、
その目に宿ったクラフトマン魂の炎が
弱まる様子はない。
空港や道路の除雪という
降雪地域にとっての、まさに生命線を握る、
その矜持にあふれし者たちが集う、
協和機械製作所の会社魂は
12月15日の
「けいざいナビ北海道」で。