会社魂のたましいvol.30 ドラゴンアロー(札幌市)
12月。夜のススキノ。雪の中に煌めくネオン。
甘美な誘いの黄金トリオだ。
来年を占うビッグイベント、
忘年会シーズン突入。
何を食らい、何に酔い、いかに気分よく過ごすか―。
安かろう、悪かろうでは、消化不良。
高価だけど敷居も高くちゃ、楽しめない。
ほどよく、心地よく、また来たいと思わせる、
そんな店に巡りあえれば、万事よし。
期待のハードルを上げ続ける客の期待に応え続け、
年々客足が落ちているといわれるススキノを中心に
11の飲食店を展開する企業。
その名は、ドラゴンアロー。
渡部龍哉社長
(もちろん、ドラゴンアローの社名は、たつ=ドラゴン、や=アローから)
はまだ30代。
初めて自分の店を持ったのは25歳のとき。
グループの1号店として
今もススキノで人気を博している
アメリカンテイストがたっぷり詰まった
ステーキとハンバーグのレストラン。
実は、開店してほどなくして行き詰ったという。
その原因を、現在はこう語る。
「適当にやっていたわけではありません。
内装、料理の味、いろいろこだわった店にはしました。
でもそれは、自分のやりたいこと、
自分がこうしたい、ということを形にした店だった。
そうじゃなくて、
お客さんが求めていることをやらなきゃいけない。
そこに気づいたら
立て直せました」
「母親が飲食店をやっていて、
あまり家にいなかったので、
正直、飲食の商売は嫌いでした。
でも気が付けば、同じ商売をしていた。
今は、長く店を続けた同業者として
尊敬しています」という渡部社長。
自ら飲食業に携わり、最も衝撃を受けたのは
業界の社会的地位の低さだったという。
「マンションの賃貸契約を結ぼうとして
職業欄に『飲食店経営』と書いたら
『保証人は誰になりますか?』と言われたんです。
信用されていない仕事なんだなと痛感しましたね」
「飲食業って、
『自分の店を持ちたい』『一国一城の主になりたい』っていう
独立心の強い人が入ってくる。
でも、『持つ』ことはできても
『持ち続ける』ことができない人がとても多い。
10年続けば老舗と言われる世界です。
それはつまり、安定した経営ができてない、
という目で見られる。
だから、業界全体の信用が上がらない。
そこをまず何とかしたかったんです」
様々な勉強を積んだというが、
あえて同業の成功者の例を追随しなかった。
「今の飲食業で成功している人をマネするということは
今の経営モデルのマネをすることだし、
それは仮に売上が上がったとしても
結局、今の飲食業のイメージから脱することはないですよね。
僕はそこを変えたいわけですから」
ドラゴンアローは従業員の7割が正社員。
飲食業界では異色である。
「賃金、社会保障、労働時間など
労働環境が良くならないと
社会的位置づけは上がっていかない。
何より、店のレベルも上がりませんよね。
苦しい職場で、すり減りながら働いている人がいる店に
お金を払って満足を得ようというお客さんはいません」
ロケの最後は、
グループ内のある店で宴会中のグループに混じり
一緒に乾杯をするシーンの撮影。
無事終えて「ありがとうございました」と席を立とうとしたら
「せっかくなんだからさぁ、一緒に飲んでいきなよ」
そのあとはジョッキ3杯、串8本。
知らぬ間に、撮影スタッフは店を後にしていた。
名前も知らない人たちとの宴は弾みに弾み、
「じゃあ、2次会行くか!」
さすがにそれは、丁重にお断りしたが…。
こんなことが何の違和感もなく楽しめることが
店の実力なのだと、改めて知った。
人を楽しませ、人と人をつなぐ仕事。
そのための経営スタイルを構築する
ドラゴンアローの会社魂は
12月8日の「けいざいナビ北海道」で。