会社魂のたましい⑧小林かもじ店(旭川市)
創業者の名前だと思った。
賀茂冶?
鴨次?
蒲司?
「よくいわれるんですが、どれも違います。“かもじ”です」
かもじとは「髢」と書く。
女性が日本髪を結うときに
地髪が短くて結い上げられないときに使用する
「添え髪」のことである。
美しく盛り上がった形を作り出すために
日本髪が一般的だった時代までは日常の必需品であった。
上、横、後ろ…盛り上げる場所、髪型によって様々な種類がある。
恥ずかしながら、全く知らなかった。
旭川で116年の歴史を持つ「小林かもじ店」は
「名前通り、かもじの製造、販売の店として創業しました」
物腰柔らかいダンディー、和風にいうなら伊達男、
3代目社長、小林和夫さんは穏やかに話す。
当然、かもじの需要は現在はほとんどない。
「もううちでも作っていませんし、作れる職人もおりません」
そんな小林かもじ店の現在の業態は
「美容ディーラー」。
これまた初耳のことばである。
美容+ディーラー=???
今回の取材は
困惑と、新たな世界を垣間見る期待が錯綜する。
美容室に訪れる客には、ほとんどその存在自体を
知られることはない、
しかし、華やかな一方で
厳しい競争の世界であるサロンのカギとなる、
美容師たちを陰で支えるサポート役・美容ディーラー。
小林社長とともに
美容師の方々の仕事を
客としてではなく、
間近で見せてもらった。
立ちづくめで、長時間労働の上、
手と、目と、頭(=感性)と、口(=接客力)をフル稼働させる
大変な重労働。
そして、訪れる客の
「綺麗になりたい」「美しくありたい」という
ひとりひとりのあふれるような強い情熱を、
全力で受け止めなければ
生き残れない業界。
「私たちが関わる、つまりお客さんは
美容師さんたちですが
私たちが見ているのは、その向こう、
美容室に来店される方々です。
そこをきちんと見られるかどうかが
私たちの仕事の基本です」
重荷に感じる様子もなく、
老舗の歴史に根差した
簡単そうだが難しいことを、さらりという。
日本髪から洋髪への
時代の転換の中を生き抜き、
今も旭川を中心に
道内の美容師たちを支えている
小林かもじ店の会社魂は
1月20日放送の「けいざいナビ北海道」で。