会社魂のたましい⑦北の誉酒造(小樽市)
時の過ぎる速度は
年末年始だからといって加減をしてくれるわけもない。
つい数時間前のことのような気分がまだ抜けないのだが、
もはや少し前の記憶として思い起こす。
今年も1年を通じての友になるであろう酒。
元日、“飲み初め”に口にしたのは、
やはり、日本酒であった。
「日本人ですから、新しい年の始まりぐらい」
という常套句。
そこにはこんな問いかけが隠されている
「正月以外で、どれぐらい日本酒を飲んでいますか?」
答えに詰まる自分がいる。
若いころは、日本酒に結構お世話になった。
バブルのころは、高名な日本酒を嗜むことに
大人の快感を覚えたのに
気が付けば、少し距離をおいてしまう関係になっていた。
ただ、酒蔵の取材は、基本的に望むところである。
雪景色の風情も気分を高めてくれる中、
創業112年、小樽の老舗酒蔵・北の誉酒造を訪ねる。
現社長の村松敏夫さんは、
参画しているグループ会社の出身。
日本酒との付き合いが深いわけではないが
「山梨出身で、母の実家はぶどう酒を扱っていたんです」
という、酒に縁の深い人生を歩んでいる方である。
ミュージアムの試飲コーナーで
おすすめの銘柄を勧めてくれるのだが、
勧め上手というより、
本当に自分の好きなものを
他人にも知ってもらいたくでしょうがないという
素直な情熱が伝わってきて
気が付けば「では、いただきます」と手が伸びて、
膝の力が心なしか緩んでいる。
そんな酒への情熱あふれるがゆえに、
村松社長は、日本酒の魅力をもっと知ってもらいたいと力説する。
「ワインなどの洋酒を和食と合わせるのが
若い人を中心にファッションのようになっている。
それは酒の楽しみ方の広がりという点では
歓迎すべきことなのかも知れませんが、
“その逆”が広がらないのが残念ですね。
フランス料理、イタリア料理、中華料理を
日本酒とともに楽しむ。
それができる力を、日本酒は持っているのに
なかなかそうならない。
それは、日本酒の魅力を知ってもらえていない、
もっとはっきり言えば、日本酒を手に取って、
飲んでもらう『出会い』が少ないからだと思います。
北の誉は、より多くの人に楽しんでもらう
『大衆のための日本酒』という役割を
長らく担ってきたのですから
私たちは日本酒に親しむ『機会を増やす』という役割を
果たしていかないといけないと思っています。」
新たな出会い=日本酒の可能性を模索する
北の誉酒造の会社魂は
1月13日放送の「けいざいナビ北海道」で。