指揮官の「答案」
ゆっくり、丁寧にペンを動かして書き上げた
その一文字を見た瞬間、
思案を続けながら確信をもって答えられずにいたテストの解答を
「はい、正解はこちら」と
見せられた気がした。
名古屋時代に3度、札幌にきて4度目、
過去7回目にした、
プロ野球優勝チームの「胴上げ」。
(名古屋時代は不思議と、すべて巨人の長嶋監督の胴上げだった)
今回はマジック対象チームの西武が敗れるのを
札幌ドームの大型ビジョンで確認して訪れた、その瞬間。
汗と熱にあふれ、戦いぬいて勝ち取った歓喜の瞬間、ではないが、
それもまた、印象深いひとときであった。
恒例の、優勝祝勝会=ビールかけ。
プロ野球に携わって21年目にして初めて
アルコールと泡にまみれるその会場で
選手たちの喜びの声を聞く、インタビュアーを務めた。
長らく現場で取材してきながら
何度もその場に居合わせながら
「きっと、縁のないまま終わるのかな」
と感じていたその時間。
当初からの予定ではなく
様々な偶然が重なって巡ってきた。
叶うときは、えてしてこういうものだ。
「頭からアルコールが染み込んでくる」という経験者の声が
初めて理解できた。
その後、息つく間もなく始まった
「優勝対応取材」。
興奮のひとときを経て
穏やかな笑顔で特設ブースに姿を見せたファイターズ・栗山監督に
このときとばかりに尋ねた。
「この1年を、ひと文字であらわすなら?」
こう言葉を添えながら、ペンを手に監督はそのお願いに応えてくれた。
「プロの選手同士の戦いは
本来は技術と技術のぶつかり合いというのが本質です。
でも、そのぶつかり合いが高いレベルで行われれば行われるほど、
最後の勝ち負けは、この部分で決すると思うんです。
1年間の戦いを見てきて、
チーム全体が、本当にこの言葉のまま、ひとつの方向に行くのが
手に取るようにわかった。
アマチュアっぽい言葉のように思われるかもしれませんが、
本当にこの1年は、この言葉で表せるのだと実感しています」
今まで様々なチームの優勝を見届けてきたが、
今回はこれまでにはない思いが残った。
まるで少年向けの熱血野球マンガのような胸躍るストーリー性、
アスリートによる超人性が前面に出るのではなく、
(実際にはまぎれもなく超人たちの勝利なのだが)
より「人間臭さ」が感じられる、
ゆえに、より身近な存在の人たちの偉業を見届けたような
親近感と爽快感。
そうした思いを解くカギも
この言葉に集約されるのだろう。
フリップに書かれていたのは
「心」
優勝までの道のりと、
初めて経験させてもらったビールかけ。
すべてを含めて
「心」に刻まれる時間を与えてくれたファイターズの皆さん、
おめでとうございます、そしてありがとうございます。