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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

4年に一度のお約束

至福の時間を、シャワーのように浴び続ける前に

やらなきゃいけないことがある。

 この時間を味わうにふさわしい、自分なりの気持ちの整理をする。

毎回、この時期になると、

それを義務と位置付けてきた。

 

今回、日本が参加して100年目にあたる節目の大会を前に

その歩みを実感できそうなタイトルの本を見つけたので

これを読むことをもって「ロンドン前の儀式」とすることにした。

 

「日本人を強くする」

(講談社・2011年)

 

2010W杯日本代表監督・岡田武史さんと

スポーツ指導の第一人者である

福島大学教授・白石豊さんの共著である。

 

とんでもなく密度が濃い。

紆余曲折を経ながら予選を勝ち抜き

南アフリカでベスト16という結果を残した

「岡田ジャパン」の内側で起きていたこと。

それをサポートする過程の中で示されてきた

白石さんたちの専門領域であるメンタル面をはじめとした

現代のスポーツ科学の底力。

「ゾーン」や「フロー」という言葉で紹介されている

「究極の集中力」の実態。

さらには東日本大震災や原発問題を踏まえ、

「日本人とは」「人間とは」といった壮大なテーマにまで話は膨らみ、

目からウロコの連発である。

 

「日本人を強くする」カギはどこにあるのか。

答えはたくさんちりばめられていたと思うが、

個人的に強く感じているのは

「既成の価値観や常識を疑い、立ち向かうこと」

ということ。

 

コーチング学の用語として

「ドリームキラー」というものが紹介されていた。

「そんなことできるわけない」「何をやっても勝てるわけない」と

限界を思いこませる周囲の存在のことで、

日本社会に根強くある傾向。

実はその限界には、根拠はない。

根拠がない限界をすりこませる存在によって

結果に違いが生まれるというものである。

 

「日本人は個人技やフィジカルで

ブラジルやスペインには勝てない」

という前提からのチーム作りをしていた岡田監督に

白石先生は専門である体操競技のコーチ経験から

「世界の誰かができることが、

日本人だからできないということはない」と明言。

そこから岡田監督の思考が変化し、

世界16強への道のりが始まっていったという。

 

社会人としてそこそこやってきたという経験を拠り所に

したり顔で世の中のことを軽軽に論じたり、結論づけようとしている

己の愚かさに気づかされている。

 

「できない」のではなく

「できるようになるために何をするか」

勿論、簡単なことではない。

大半の人が「できない」と判断してきたことなのだから。

そこを打ち破るために、知恵を絞り、実践し、

試行錯誤する。

 

仮に壁にぶつかったりしても、

「以前できていたように戻したい」と、過去を起点に考えるのではなく

「新しい自分を創造する」と未来へと向かう。

 

「タテに煉瓦を積むだけでは、いつか崩れてしまう。

ときには横に積むことで、初めて高く積むことができる」

という岡田監督の例えも印象的だった。

 

きっとこうした歩みを

人は「挑戦」というのだろう。

 

そして彼の地で、

日本代表として競技する人たちと、

彼ら、彼女らとともに戦い、支える人々は

「ドリームキラー」に打ち勝ち

「挑戦」を続けてきた人たちなのだ。

 

だから、彼らが見せるパフォーマンスは

等しく尊い。

 

よし。

見届ける準備は整った。