身体に沁みる暑さ 心に沁みる熱さ
「いやいやいや…」
そこからなかなか次の言葉が出てこない。
感情の湧き立つ力をもそぎ落としてしまう暑さを感じるのは
久しぶりだ。
真夏の体育館に、あふれんばかりの人。
暑いのは当たり前と覚悟していたはずなのに。
そんな情けない大人を尻目に
目の前のコート上では
人生最高の熱さを放ち、躍動する若者たちの姿が。
あんなに動いて、あんなに声を出して、
あんなに素直に感情を昂ぶらせられたら、
どんなに心地よいだろう。
きっと自分にも、あんな時代はあったのだろうけど、
そんな感覚を全く思い出せないのがもどかしい。
同時に、今の彼ら、彼女らが、たまらなくうらやましい。
今年もまた、そんな時間を過ごした。
全国大会出場をかけた
中学生バスケットボーラーたちの戦い。
勝てば全国、という準決勝。
わずかに2点差で敗れた函館・深堀中。
その瞬間、崩れるようにコートに膝まづく5人。
顔を覆い、わずかに震えるベンチの選手。
悲鳴とため息に包まれる応援席。
スポーツの宿命であり、常に人のこころに刻まれる
残酷にして、尊い瞬間。
「きっと君たちの一生に刻まれるこの時間を
いつまでも大切にして欲しい」と思うと同時に
「いつまでもこの瞬間に
素直に心が動く自分でありたい」という内なる声が響く。
胸に迫る光景を前に
暑さはいつの間にか、消し去られている。
ああ、今年もここにいてよかった、と素直に思う
大会終了後、全国大会出場を決めた4チームの
指導者の方に話を聞いた。
「苦しいときに、ぶれずに頑張る」
「仲間のことを考えて、困っていたら手を差し伸べる。
自立して、自分で判断して行動する。
人間性が育たないと、最後に勝てない。」
「勝つためには、それにふさわしい心構えがある」
「コート以外のところで“だらしない”チームは
全国に出てこないことを、自分たちの目で確認してきて欲しい」
表現は違っても、言いたいことは同じだ。
自分に向けられている言葉のように感じた。
それもまた、この仕事の魅力でもある。
まだ覚えている、ちょっと昔の人にも
なかなか思い出せないくらい、昔の人にも
伝わる何かがあって欲しい、と思って実況しました。
「第41回 北海道中学校バスケットボール大会」
8月12日、午後4時から放送します。