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まだ、しゃべるんですかぁ〜!?

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

大藤 晋司 アナウンサー

出身地
茨城県高萩市
入社
2003年4月

43度目の夏

あまり、自分に対してのメモリアルなことは、書きたくない性分なのだが、

毎年、否応なく過去、現在、未来の自分と向き合うその日が訪れてしまい、

こころに充満しているいろんな思いを抱えておくにはむずがゆいので、

最近出逢ったことばに、今の思いを重ねて、書き連ねます。

その① 「欲から入って、欲から離れる」

野村克也・前楽天監督の著書にあったことばです。

 

元になるエピソードは、勝負どころで代打で送り込んだバッターが、

絶好球を打ち損じ、チャンスをつぶして敗れたときのことです。

そのときのことを、野村前監督は以下のように表現しています。

 

自分のバットで試合を決めてやる―そういうポジティブな意欲を持って勝負の場に向かうことも私は否定しない。『打てなかったらどうしよう』と、ネガティブに発想するよりはよっぽどましだ。不安は判断力を鈍らせ、墓穴を掘る大きな要因となるからだ。ただし、自己愛から発した「欲」だけは、打席に立ち、バットを構えた瞬間に捨て去らねばならない。」

 

心から繊細さを奪い取ったのは、紛れもない『欲』である。

余計な『欲』は、ほんのわずかなズレとなって組織から勝利を遠ざけ、自分自身から成功を奪い取るのだ。」

 

「人生最大級のチャンスが目の前にぶら下がったとき、その心の切り替えができるか否かで、明暗が分かれる。

 たとえよこしまな色気が心に湧いてこようとも、その気持ちを完全にコントロールできなければ、好結果は生まれない。」

 

20年ぐらいアナウンサーをやってくると、「あれもやりたい」「こうやってみせる」という気持ちが、ことあるごとに湧いて出てくる。

きっとそれは“よこしまな”色気だ。

その色気に歯止めをかけないと、たいてい、いやらしさが前に出てしまい、後悔する結果になるのは、過去の苦い経験からも明らかだ。

 

蓄積してきたものを伝えたい、その「欲」を枯らさずに、更に精進しながら、

実際に伝えるときには、その「欲」から離れる。

 

その② 「『うまく』しゃべることは、よどみなくしゃべることではありません。『伝える』という気持ちを表現することです」

 

元日本テレビアナウンス部長の、石川牧子さんが

本を出版された際の取材で答えたことばです。

 

かつて、全国高校サッカーの実況スタッフに入ったときの部長で、

大会前に集まった全担当アナに、こんな訓示をされたことを覚えています。

 

「ぜひ皆さん  いい 実況を お願いします」

 

文字にすると実に単純なのだが、

耳で聴くと、非常に重みというか、迫力を感じ、思わず固唾を呑みました。

一音一音を発するときの間(ま)や緩急、高低、そして語りかけるときの“眼力”、

全てが相まって発せられたことばの底力を思い知った経験でした。

 

同じ取材で、こんなことも答えていました。

 

 「携帯電話やパソコン世代の若い人は会話が少ない。

相手の声のトーン、間(ま)で会話に体温を感じますよね。それを察知するアンテナが、なくなっていると思います」

 

若くはないが、「会話の体温を察知するアンテナ」が、

錆びていないか、いま一度点検しなければ、と思います。

 

その③ 「アナウンスは、人格でするものです」

 

以前にも何度か書いたことばなのですが、

私の人生の師で、おととし急逝された方の、口癖です。

あえて付け加えることはありません。

常に忘れずにいなければならないことです。

 

先日43歳になりました。

こうしたことばをこころに留め

この1年を過ごしたいものです。

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